美容整形について

日本、韓国、タイ、中国、アメリカ、ヨーロッパなどで、世界一美容整形の技術が進んでいる国はどこ?

最近、日本に住んでる日本人なのに、韓国やタイで美容整形手術を受けてきて、上手くいっておらず、修正手術目的で来院される患者様が多いです。特にアベノミクス前の円高の時代には多かったです。

そのような患者様に、「日本に住んでるのに、何故日本で手術を受けないでわざわざ海外で手術を受けたのですか?」と質問すると、「円高の影響で、韓国で安く整形手術を受けられるツアーがあったから」「タイは物価が安いので、日本よりもはるかに安く整形手術が受けられるというツアーがあったから」「韓流スターやK-POPアイドルに憧れていて、韓国で整形すれば、自分もああいう風になれると思ったから」「ツアー会社の人は、日本よりも韓国の方が整形手術の技術は進んでいるから、日本より韓国で手術を受けるほうがいいと言っていたから」「ツアー会社の人は、タイは発展途上国のイメージがあるけど、整形手術の技術は日本と同じくらい進んでいると言っていたので安心していた」などのようにおっしゃいます。

そして、そのような患者様の意見を聞くと、「カウンセリングのとき、ガイドの通訳さんが一緒だったんだけど、通訳さんを挟んでのカウンセリングだったので、自分の意見を思うように伝えることができなかったし、先生の言っていることもはっきりと伝わらなかった」「思った通りになっていなかったので、無料で修正手術をお願いしたいんだけど、遠すぎて行くことができない」「整形ツアーの旅行代理店に文句を言って手術代金を返金してもらおうとしたけど、『うちの会社はあくまで提携している美容整形クリニックで手術を受けるツアーを組んでいるだけなので、手術の結果に対する補償はできません。そのことは契約書に書いてあります。』と言われるだけで、とりあってもらえなかった」などとおっしゃいます。

もちろん、日本人が韓国やタイに行って、手術が上手くいっているケースもたくさんあると思います。しかし、私の感覚では、日本人が日本で整形手術を受けて上手くいっている人に対する上手くいかなかった人の割合よりも、日本人が韓国で整形手術を受けて上手くいっている人に対する上手くいかなかった人の割合や、日本人がタイで美容整形手術を受けて上手くいっている人に対する上手くいかなかった人の割合のほうがはるかに多いと感じます

一方、最近は中国から高須クリニックに手術を受けに来てくださる患者様が多いです。中国で高須クリニックのホームページや私のオフィシャルブログを見て、わざわざ日本まで来てくださいます。中国本土にも美容整形クリニックはたくさんあるのですが、中国の富裕層の人達は中国本土のクリニックで手術を受けることはせず、日本や韓国まで行って手術するのが主流で、中国本土のクリニックで手術を受けるのは主に中間層の人達です。ありがたいことにわざわざ私を指名して来てくださる中国人患者様も多いです。しかし、中国人の患者様を診察、カウンセリングするのは非常に大変です

患者様本人は日本語が全くわからない人がほとんどなので、必ず通訳さんを連れてくるのですが、患者様が私にうったえるのも、私が患者様に説明するのも、全て通訳さんを挟んでの会話になるので、通常の日本人の患者様とのカウンセリングに比べて3倍以上時間がかかります。しかも、遠路はるばるいらしただけあって、私に対して過剰なまでの期待をしている方が多く、二重まぶたの仕上がりなどにおいても要求が多く細かいことが多いです。

ほとんどの患者様は、中国の女優さんの顔写真を見せて(私の知らない女優さんがほとんどです)、「こういう顔になりたい」とおっしゃいます。しかし、本人の顔と女優さんの顔がかけ離れていることが多いので、現実的にその女優さんの顔にすることは不可能です。しかし、患者様は、「わざわざ日本まで来て指名した有名な医者だから、必ず私の望みを叶えてくれるだろう」と夢を描いて、目を輝かせているのです。患者様の期待を裏切るわけにはいかないので、私は徹底的にできることとできないこと、無理な手術をした場合のリスクなどについて説明します。そして、私の意見と患者様のご要望を折衷して、最終的なデザインを決めます。しかし、それも全て通訳さんを通しての会話なので、本当に私の言いたいことが本人に伝わっているのか凄く不安なことが多いです。

二重まぶた切開法を行う場合は必ず、「1週間は傷に糸がついており強い腫れがあります。その後、徐々に腫れはおさまっていきますが、厳密にいうと、完全に腫れが引いて完成するのは約6ヶ月後です。腫れている間は予定よりも二重の幅が広くなっていますが、必ず治まるので心配ありません。」と説明します。しかし、ほぼ100%の患者様は1週間後の抜糸のとき、あるいはその前に、クリニックで大騒ぎします。物凄い剣幕で私に対して怒鳴り散らすのです。通訳さんに話を聞くと、どうやら予定していた二重の幅よりも広いことに怒ってらっしゃるそうなので、私は笑顔で、「まだ腫れていて幅が広いだけなので大丈夫ですよ。日にち薬で腫れは引いていって、必ず予定していた幅に落ち着きますよ。それは術前のカウンセリングのときにも説明したでしょ?」と時間をかけて説明します(もちろんこれも通訳さんを挟んでの説明なので、凄く時間がかかります)。すると、患者様は笑顔を取り戻して、「わかりました。安心しました。やっぱりわざわざ日本まで来て高須先生に手術していただいて本当に良かったです。」と、私の手を握っておっしゃるのです(もちろんこれも通訳さんを挟んでの会話です)。どうやら中国では凄い剣幕で相手を怒鳴り散らすのは日常的なことらしく、ただ不安だっただけで、私に対して怒っていたわけではないみたいです。

本当は、中国人の患者様は中国の腕のいい美容外科医と中国語でカウンセリングして、手術してもらうのが一番良いと思うのですが、私を指名して中国から来てくださる患者様の話を聞くと、「中国の医者は信用できないから、わざわざ日本まで来たんだ」とおっしゃるので、しょうがないのかもしれません。このような私の経験からも、外国まで行って美容整形手術を受けることはとても大変なことです。まず、通訳さんを介して医者と患者様がカウンセリングするのは大変難しく、微妙なニュアンスなどを正確に伝えることができない場合があります。また、その国ごとに流行りの顔が違ったり、美的感覚や美容整形に対しての考え方が異なることがあります

日本では整形したことがバレないように自然な仕上がりに整形するのが主流ですが、韓国では日本と違って美容整形文化が国に根付いているため、整形していることが周囲にバレても良いという感覚があります。そのため、日本人が韓国で整形して、あからさまな整形バレバレの顔にされてしまって泣いていても、それは韓国の整形としては大成功なので、手術した医者も、まさか自分が手術した患者が日本で泣いているとは思っていない場合があります。

日本に住んでいる日本人が韓国やタイで美容整形してきて、手術が上手くいかず、高須クリニックに修正手術目的でいらっしゃる患者様をカウンセリングしていると、美容整形手術を受けることを安易に考えている方が多いです。エステに行ってマッサージを受けたり、美容室で髪を切ったり、ブティックで洋服を買ったり、ブランド品を買ったりするのと同じ感覚で海外で美容整形を受けてくるのです。美容整形はあくまで医療行為であり、人間の体にある程度の侵襲を加えて美しく変化させるものです。

海外で美容整形を受けようとしている人は、「必ず理想の自分になることができるだろう」と夢を描いて手術を受けてくるのでしょうが、美容整形手術の結果というのは極めて現実的なものです。また、美容整形手術はアフターケアが重要になることがあります。日本人が日本で手術を受けた場合は、不安なことがあればすぐ担当医に診てもらうことができますが、海外で手術を受けた場合は、手術の経過に不安なことがあっても、担当医に診てもらうことができません

日本でも韓国でもタイでも、どこの国でも、いい美容外科医もいれば悪い美容外科医もいます。手術の腕のいい美容外科医、手術の腕の悪い美容外科医、人間的に素晴らしい美容外科医、人間的に問題のある美容外科医がいます。海外で、たまたま手術の腕が良く、人間的にも素晴らしい美容外科医に当り、自分の意見も通訳さんを介して完璧に伝えることができ、手術の経過も全く問題なければ良いのですが、そんなに全て上手くいく確率は低いと思います。

特に韓国は、政府が外貨獲得のために、積極的に外国人が韓国国内で美容整形手術を受けるよう政策をうっているので、日本人や中国人が韓国で美容整形手術を受けることを歓迎するムードがあり、それに流されてしまうのもあるかもしれません。また、韓国やタイでの整形ツアーを企画する日本の旅行代理店は、患者様が手術を受ける美容クリニックと提携しており、手術代金の一部をマージンでとるので(10%くらいが相場)、利益をあげるために積極的に海外での手術を勧めます。私のところにもよく中国人のブローカーがやってきて、「高須クリニックに中国の患者をどんどん紹介しますよ。紹介料は紹介患者が受けた手術代金の10%でいいですよ。」と話を持ちかけられますが、私は基本的に外国での美容整形手術はお勧めしないので、そのような話は全てお断りしています。

よく色々な人から、「世界で一番美容整形の技術が進んでいる国はどこなんですか?」と質問されます。私の答えは、「日本、韓国、アメリカ、ブラジル、イギリス、フランス、イタリアなどの国は美容整形先進国であり、どこも同じくらいレベルが高いです。ただし、国によって得意、不得意の手術があるので一概にはいえません。中国、ロシア、タイ、ベトナム、ミャンマー、インドなどはまだ美容整形発展途上国なので、日本などの国に比べれば技術的に劣る分野が多いです。」です。

東洋人、西洋人、黒人では、肌の色、肌質、顔のつくり、体型などが大きく異なります。日本人や韓国人などの東洋人は一般的に、分厚い一重まぶたが多く、鼻が低く、顎があまり出ていなく、エラが張っていて、皮膚が厚く、綺麗に傷を縫合しないと傷が目立つ肌質をしています。一方、白人は一般的に彫りが深い顔をしており、二重まぶたで、鼻が高く、顎が出ていて、エラが張っていていなくて、皮膚が薄く、肌の色が白いため、傷を丁寧に縫合しなくても比較的綺麗に傷が治る肌質をしています。また、アメリカやブラジルは肥満大国なので、150㎏超級の超肥満患者が多いです。

そのため、日本や韓国では、二重まぶたの手術、目頭切開、鼻を高くする治療、顎を出す治療、エラを細くする治療などが主流で、これらの治療に関しては世界のツートップです(現在、日本と韓国の技術はほぼ同レベルです)。一方、肥満大国であるアメリカやブラジルでは、日本に比べ、乳房縮小手術(マンマリダクション)、アブドミノプラスティ、胃縮小術、胃バイパス手術などはたくさん行われています。しかし、白人は東洋人に比べ、体質的に傷が綺麗に治りやすいし、傷自体を気にしない国民性であるため、白人の美容外科医は日本人の美容外科医よりも傷の縫合が雑です。

例えば、シリコンバッグプロテーゼによる豊胸手術をする場合、日本では目立たないようにワキの下のシワに沿って切開し、そこからプロテーゼを入れ、ワキの傷は丁寧に中縫いと外縫いをしますが、アメリカやブラジルでは乳房下溝(バストの下)を切開し、プロテーゼを入れ、傷はホッチキスでバッコンバッコンしておしまいです。そのため、日本人がアメリカやブラジル、ヨーロッパなどで豊胸手術、フェイスリフト、上まぶたや下まぶたの手術を受けると、異常に傷が汚い場合が多いです。

結局、どこの国の人も、自分の国の腕のいい医者に手術してもらうのが一番だということです。

この記事の監修医情報
平成11年
  1. 藤田医科大学医学部卒業
平成11年
~平成13年
  1. 藤田医科大学麻酔救急科に勤務
  2. 麻酔科標榜医取得
平成13年
  1. 藤田医科大学大学院入学。
    形成外科入局。高須クリニック勤務
平成14年
  1. 群馬県立がんセンター頭頚部外科勤務
平成15年
  1. Ivo Pitanguy Institute Postgraduate Course (Brazil) 研修
平成17年
  1. 単一植毛手術の研究にて医学博士取得
平成19年
  1. 日本形成外科学会専門医取得
  2. 高須クリニック名古屋院院長

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